この記事のポイント
フローチャートで申請枠を診断!
付加価値額成長率が年平均4.0%以上へ引き上げ、全申請枠で一律に
「新事業売上高要件」が基本要件から審査項目へ
グローバル枠の支援内容が大幅拡充
リース活用の新スキーム導入
はじめに
小企業向けの代表的な補助金である「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」が統合され、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」として第1回公募がスタートしました。
これに伴い、事務局は独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)へ一本化され、これまで別々の事務局・別々のスケジュールで運営されていた2つの補助金は、単一の制度として運用されることになります。
「結局、何がどう変わったのか」「自社はどの申請枠を選べばよいのか」といった疑問をお持ちの経営者や支援機関の方も多いでしょう。
本コラムでは、自社に適した申請枠を判断しやすい簡易フローチャートを用いて、新制度をわかりやすく解説するとともに、従来制度からの変更点についてもご紹介します。
制度概要やスケジュールなどの基本情報については、以下の記事でもご紹介しております。
ぜひあわせてご覧ください。
≪参考記事≫
https://svltd.co.jp/shinjigyou-hojo-col/detail.html?id=2549
従来制度の主要補助金の中での位置づけ
中小企業庁が運営する情報サイト「ミラサポplus」では、中小企業・小規模事業者向けの主要な補助金として、次の制度が紹介されています。

| 補助金 | 支援内容 |
|---|---|
| ものづくり補助金 | 革新的な設備投資やサービス開発、試作品開発の支援 |
| 新事業進出補助金 | 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出支援 |
| 省力化投資補助金 | 人手不足解消に効果のあるIoT・ロボット等の導入支援 |
| デジタル・AI導入補助金 | 旧IT導入補助金/ITツール導入による業務効率化の支援 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 経営計画に基づく販路開拓等の支援 |
| 事業継承・M&A補助金 | 事業承継やM&A、PMIに関する費用の支援 |
| 成長加速化補助金 | 売上高100億円を目指す成長志向型企業の設備投資支援 |
このラインナップの中で、これまでのものづくり補助金は、生産性の向上に取り組む事業者向けの制度として、新製品・新サービスの開発や生産ラインの強化、試作品開発などを幅広く支援してきました。
一方、新事業進出補助金は、新規事業への進出により企業の成長・拡大を図る事業者を対象に、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出にかかる設備投資を支援するものでした。
このように、両制度は「生産性向上に資する、自社の強みを活かした新製品・サービス開発」と「新市場・高付加価値事業への進出による生産性向上」という、隣接しつつも異なる目的を持つ制度として並存していました。
しかし、目的が近く申請者にとって使い分けが分かりにくい面もあり、この2つが統合される形となったのが今回の「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」です。
新制度3つの申請枠と全体像
新制度では、以下の3つの申請枠が設けられています。
・革新的新製品・サービス枠
旧「ものづくり補助金」の主力枠であった「製品・サービス高付加価値化枠」を引き継ぐ枠で、自社の技術力を活かした革新的な開発を支援します。
補助下限額は100万円、補助上限額は2,500万円で、賃上げ特例の適用により最大3,500万円まで拡充されます。
建物費は対象外ですが、機械装置・システム構築費が必須となります。
・新事業進出枠
旧「新事業進出補助金」を継承した枠で、新市場・高付加価値事業への挑戦を支援します。
補助下限額は750万円、補助上限額は7,000万円で、特例適用時は最大9,000万円となります。
建物費が補助対象となるのが大きな特徴です。
・グローバル枠
旧「ものづくり補助金」の「グローバル枠」を発展させた枠で、自発的な海外販路開拓(輸出)に向けた国内製造拠点の強化を支援します。
補助上限額は、新事業進出枠と同水準が設定されています。
どの申請枠を検討すべきか:簡易フローチャート
「自社の取組がどの申請枠にあてはまるか」で迷う方も多いはずです。
申請にあたって、以下のステップで確認してみましょう。

自社の取組に適した申請枠をご確認いただけたでしょうか。
なお、本診断結果はあくまで目安ですので、申請枠の最終的な判断については、必ず最新の公募要領でご確認ください。
全枠共通の「基本要件」における重要変更
ここからは、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」への統合に伴う主な変更点について解説します。
新制度への移行に伴い、すべての事業者が満たすべき「基本要件」が強化されました。
申請にあたっては、これらの要件を満たすことが前提となります。
第一に、付加価値額の成長目標です。
旧ものづくり補助金では年平均成長率(CAGR)3.0%以上が基準でしたが、新制度では全枠一律で4.0%以上に引き上げられました。
より生産性の高い事業への転換が強く求められています。
第二に、「子育て等に関する職場環境整備」の義務化です。
従来の「一般事業主行動計画の公表」が全事業者(従業員数問わず)必須となったことに加え、以下のいずれか一つの取組を実施し、実績報告時に証憑を提出することが義務付けられました。
若手従業員向けの「ライフデザインサービス」の活用
「家事代行・ベビーシッターサービス」の活用支援
既存の育休制度等の従業員への「周知・普及・啓発」
※くるみん認定取得事業者等は免除されます。
新事業進出枠:数値基準の撤廃と「質」の審査
実務上の大きな変更点として、新事業進出枠における「数値目標の扱い」が挙げられます。
旧制度では、新事業の売上高が全社売上高の10%(または付加価値額の15%)以上を占める計画であることが「必須要件」でしたが、新制度では、この「10%/15%」という定量的数値は基本要件から削除されています。
その代わり、補助事業終了後の3~5年の事業計画期間において、「付加価値額」や「一人当たり給与支給総額」などの成果目標を具体的な算出根拠とともに提示することが必須となっており、申請者はこれらの目標達成に責任をもって取組む必要があります。
さらに審査項目においては、単なる数値目標の高さだけでなく、質と戦略的インパクトが厳格に評価されます。
・新市場性・高付加価値性
社会的な普及度が低い「新規性」のある分野か、あるいは同一ジャンル内で高水準の「高付加価値化・高価格化」を図るものであるかが選択制で評価されます。
・政策面(戦略的インパクト)
日本経済の構造転換を促す分野への進出であるか、あるいは地域経済への波及効果や大規模な雇用創出が期待できるかといった点が重視されます。
このように、形式的な売上比率の達成よりも、事業計画の妥当性と経済的なインパクトという「事業の質」を問う審査体制へと移行しています。
グローバル枠の拡充と専門家経費の統一
海外展開を目指す事業者にとって、グローバル枠の拡充は見逃せません。
新制度におけるグローバル枠は、従来の「ものづくり補助金」のグローバル枠と比較して、支援内容が大幅に強化されています。
・補助上限額の引き上げ
従来の「ものづくり補助金」のグローバル枠では、補助上限額は一律で3,000万円でした。
新制度では、従業員数に応じて2,500万円~7,000万円(大幅な賃上げ特例適用時には最大9,000万円)へと拡充されました。
・補助率の拡充
従来は、中小企業1/2、小規模事業者2/3でしたが、新制度では中小企業者でも一律2/3へと引き上げられました。
また事業実施期間についても、従来よりも2か月長くなり、より余裕を持った事業計画の遂行が可能となっています。
専門家経費の統一
補助対象経費における専門家経費の上限も変更されました。
旧ものづくり補助金では経費総額の1/2が上限でしたが、新制度では全枠一律で1/5(20%)に制限されています。
コンサルティング費用などを計上する際は、全体の経費バランスに注意が必要です。
リース活用の新スキーム
これまで「ものづくり補助金」では事業者による単独申請しか認められていませんでしたが、統合後の新制度では、中小企業等とリース会社が共同で補助金を申請できる「共同申請」の仕組みが導入されました。
これにより、リースを活用した設備投資が従来よりも利用しやすくなっています。
<単独申請と共同申請の違い>
・単独申請(借用扱い)
中小企業等が単独で申請し、リースを「機械装置・システム構築費」の中の「借用」として計上します。
補助対象となるのは、補助事業実施期間中に支払うリース料のみに限定され、契約期間が実施期間を超える場合は、期間分のみを抜き出す按分計算が必要です。
・共同申請(新スキーム)
中小企業等とリース会社が共同で申請を行う方式です。
補助金は機械装置等を購入するリース会社へ交付されますが、その分、事業者が支払うリース料から補助金相当分が減額されることで、事業者に利益が還元されます
この方式の最大の特徴は、「補助事業実施期間中に要する経費」という期間制限を受けない点にあります。
<共同申請を活用する際の注意点>
一方で、共同申請スキームには実務上おさえておくべき重要な条件・制限があります。主なポイントは以下の3点です。
① 対象取引・対象経費の限定
共同申請の対象となるのは ファイナンス・リース取引のみです。
また、補助対象となる経費区分も「機械装置・システム構築費」に限られ、建物費は共同申請の対象外です(建物取得にリース会社を利用する場合、建物取得費は本補助金の対象になりません)。
② リース会社の要件
共同申請のパートナーとなるリース会社は、中小企業者等に限定されません。
既に取引のある大手リース会社と組んで申請することも可能ですので、既存の取引関係を活かした申請が現実的な選択肢となります。
なお、共同申請にあたっては、申請時に「リース料軽減計算書」とリース会社が作成する「リース取引に係る宣誓書」を事務局に提出する必要があります。
③ 補助金返還リスクの所在
賃上げ要件未達など、補助金返還が発生する事態となった場合、リース会社に交付されている補助金については、リース会社が返還義務を負う仕組みとなっています。
また、リース期間についても、原則として処分制限期間を含む期間となるよう設定する必要があります。
重複申請と過去受給者への厳格な制限
重複申請や過去受給者への申請制限については、以前のコラムでも解説しましたが、申請前に必ず確認しておきたいポイントとなるため、本コラムでも改めてご紹介します。
補助金の公平性を保つため、以下の制限ルールが明文化されています。
・過去16か月以内に同種補助金の採択を受けている場合は申請不可
過去16か月以内に「事業再構築」「旧新事業進出」「旧ものづくり」等の採択(交付決定)を受けている、または事業実施中の事業者は申請できません。
・過去3年間で2回以上交付決定を受けている場合は対象外
申請締切日起点で過去3年間に、これら同種の補助金の交付決定を合計2回以上受けている場合は対象外となります。
・グループ会社・代表者及び住所が同一の法人等(みなし同一事業者)は1申請のみ
親会社・子会社の関係や、代表者が同一である法人などは「同一事業者」とみなされ、1公募につき1申請しか認められません。
まとめ
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」への制度統合は、中小企業に対して「数値の達成」だけでなく、「職場環境の整備」や「真にインパクトのある新規事業への挑戦」をより本質的に求める内容へと進化したと言えます。
特に、新市場性・高付加価値性の審査基準を正しく理解し、客観的データに基づいた説得力のある事業計画を策定することが、採択を勝ち取るための最大の鍵となります。
申請を検討されている事業者の皆様は、GビズIDプライムアカウントの取得や行動計画の公表といった時間がかかる事前準備に、すぐに着手されることをおすすめします。
補助金の活用を検討されている方は、ぜひ認定支援機関へご相談ください。

