この記事のポイント
板金・成形工程は「省力化」の効果が出やすい
「一般型」と「カタログ注文型」の違いについて
採択事例から読み取る制度活用のポイント
はじめに
板金・成形工程を持つ製造業は、レーザー加工機、タレットパンチプレス(タレパン)、プレス機、ベンダー(曲げ加工機)等の専用設備を用い、多品種少量から量産まで幅広い金属加工を担う、日本のものづくりを支える基盤産業です。
しかし近年、多くの企業から「ベテラン職人の高齢化による引退」「若手の採用難」「多品種少量化による段取り替えの増加」といった、人手不足と生産性低下に関する切実な声が寄せられています。
こうした深刻な人手不足への切り札として、今大きな注目を集めているのが「中小企業省力化投資補助金(省力化投資補助金)」です。
本補助金は、簡易な手続きで汎用設備を導入できる「カタログ注文型」に加え、自社の課題に合わせたオーダーメイドな省力化計画を実行できる「一般型」が展開されており、中小製造業の設備投資を強力にバックアップしています。
本コラムでは、板金・成形工程にスポットを当て、現場が直面する課題をどのようにこの補助金で解決すべきか、実際の採択事例を交えながら分かりやすく解説します。
省力化投資補助金の製造業における採択状況は以下のコラムでも紹介しております。
ぜひあわせてご覧ください。
≪参考記事≫省力化投資補助金の製造業における活用状況とは?
一般型・カタログ注文型の採択結果から分析
「省力化投資補助金」の制度概要
省力化投資補助金には、「一般型」と「カタログ注文型」の2つのルートがあります。
項目 | 一般型 | カタログ注文型 |
|---|---|---|
特徴 | 個別の現場に合わせた設備導入・システム構築を支援。 | 事務局が事前に指定・登録した「カタログ製品」から選んで申請。 |
補助上限 | 最大1億円 | 最大1,500万円 |
補助率 | 1/2・2/3 | 1/2以下 |
こんな企業向け | 工場全体のライン再編や本格的なシステム化をしたい場合 | カタログに登録された特定の製品をピンポイントで導入し、すぐ効果を出したい場合 |
板金・成形工程を持つ現場の場合、既存設備との連携や工場レイアウトに合わせたカスタマイズが必要になるケースが多いため、大規模な自動化ラインを構築するなら一般型、単体のロボットや搬送機器を追加導入するだけならカタログ注文型、という使い分けが現実的です。
板金・成形分野でどんな設備が対象になりやすいか
手作業で行うガス切断機や人手による切断・材料供給工程を、レーザー加工機やタレパン、プレス機などへ更新する設備のほか、自動搬送装置や材料供給装置など、人手不足や工程全体の省力化につながる周辺設備・システムも補助対象として想定されます。
・材料の自動搬入・搬出を行うローダー/アンローダー
・ワーク仕分け・パレタイジングを行う産業用ロボット
・バリ取り・面取りの自動化装置
・加工データと連動した工程管理・生産スケジューリングシステム
・検査工程を自動化する画像検査装置
・金型交換作業を自動化するクイックダイチェンジ(金型自動交換システム)
・成形品の脱型・取り出しを行う成形品取り出しロボット
一般型は、既存のレーザー加工機やプレス機などとロボット・搬送設備・生産管理システムを連携させ、自社の生産工程に合わせた自動化ラインを構築するような活用が想定されます。
一方、カタログ注文型では、ローダー/アンローダーや産業用ロボット、搬送設備など、カタログに登録された汎用性の高い省力化設備を導入し、個別工程の省力化を図るケースに適しています。
登録された省力化製品のカタログは以下リンクよりご覧ください。
≪参考≫中小企業省力化投資補助金 カタログ注文型 製品カタログ
板金・成形工程に関連する採択事例
第4回公募の採択結果概要では、「金属製品の加工製造業を営む事業者」の事例として、ベンダーによる曲げ加工の自動化案件が紹介されています。

≪出典≫中小企業省力化投資補助事業 一般型公募(第4回)採択結果について
金属製品の加工製造を行う企業では、熟練の技が必要な「曲げ工程」の人手不足により、増産要求に応えられず失注が続くという課題を抱えていました。
そこで同社は、最新のロボットベンダーと、厚板や大型部品を扱えるオーダーメイドの加工ロボットシステムを導入しました。
これにより、工程の無人化が進み、人手による作業時間を1日6時間削減することに成功しました。
生産能力は最大200%まで拡大し、夜間稼働による利益率向上と、残業削減による職場環境の改善を同時に達成しています。
板金・成形加工を行う企業が制度活用を検討する際の視点
上記事例からも分かるように、審査で評価されやすいポイントとして、次のような要素が挙げられます。
・「人手不足により受注を断っている」「増産に対応できない」といった具体的な経営課題に加え、作業時間や生産量などの数値が明確に示されていること
・汎用設備をそのまま導入するのではなく、厚板や大型製品への対応など、自社の製造現場に合わせたオーダーメイド性の高い設備導入であること(一般型)
・省力化によって創出された人員を、工程管理や人材育成など、より付加価値の高い業務へ再配置する計画が示されていること
採択事例を見ると、単に設備を導入するだけでなく、「導入前にどのような課題があったか」「その課題に対してどのような設備・機能で対応するのか」「導入後にどれだけの時間削減・生産性向上・売上拡大が見込めるのか」を数値も交えながら具体的に説明することが、審査において重視されていることがうかがえます。
まとめ
板金・成形工程では、材料搬送や加工機へのワークの供給・脱着、仕分け、検品など人手に依存する工程が多く、省力化投資補助金の効果が現れやすい業種の一つです。
オーダーメイドの自動化ラインを構築したいなら一般型、汎用ロボットや搬送機器を手軽に導入したいならカタログ注文型と、目的や投資規模に応じて制度を使い分けることがポイントになります。
自社の設備投資計画を早めに整理し、公募開始のタイミングを逃さないよう準備を進めましょう。
省力化投資補助金の活用を検討されている事業者の方は、ぜひ一度、認定支援機関にご相談ください。