この記事のポイント
省力化投資補助金「一般型」と「カタログ注文型」の違いと選び方
機械加工業における省力化設備導入の事例
申請時に押さえておきたいポイント
はじめに
製造業の機械加工では、ワークの段取り・脱着、加工条件の設定、寸法測定、バリ取りや仕上げなど、多くの工程が依然として作業者の経験や技能に依存しています。
特に多品種少量生産を行う企業では段取り替えの頻度が高く、設備の稼働率を維持するための人材確保が大きな課題となっています。
また、無人運転を実現できれば生産能力の向上が期待できる一方、自動化設備の導入には多額の初期投資が必要となるため、導入をためらうケースも少なくありません。
このような課題への対応策として活用できるのが、中小企業省力化投資補助金です。
本コラムでは、旋盤やマシニングセンタなどを活用する機械加工を行う製造業を対象に、一般型・カタログ注文型それぞれの制度概要や活用のポイントに加え、実際の採択結果から見える製造業での活用傾向について解説します。
省力化投資補助金の2つの申請類型
一般型は、現場の実情に合わせたオーダーメイド性の高い設備・システムを導入できる申請類型で、ハードとソフトを組み合わせた事業全体を一体的に支援できる点が特徴です。
補助率および補助上限額は、以下の通りです。
従業員数 | 補助上限額 ※1 | 補助率 |
|---|---|---|
5人以下 | 750万円(1,000万円) | 中業企業 ※2 |
6~20人 | 1,500万円(2,000万円) | 中業企業 ※2 |
21~50人 | 3,000万円(4,000万円) | 中業企業 ※2 |
51~100人 | 5,000万円(6,500万円) | 中業企業 ※2 |
101人以上 | 8,000万円(1億円) | 中業企業 ※2 |
※1 ( )は大幅賃上げ特例適用時
※2 ( )は最低賃金引上げ特例適用時
一方、カタログ注文型は、あらかじめ事務局に登録された汎用製品の中から必要な機器を選び、販売事業者のサポートを受けながら申請する仕組みです。
オーダーメイド設備のような柔軟性はありませんが、製品がカタログ化されているため事業計画の立案や申請書類の準備がしやすく、随時公募で受け付けられているためタイミングを選ばずに申請できるのが利点です。
補助率および補助上限額は、以下の通りです。
従業員数 | 補助上限額 | 補助率 |
|---|---|---|
5人以下 | 500万円(750万円) | 1/2以下 |
6~20人 | 750万円(1,000万円) | 1/2以下 |
21人以上 | 1,000万円(1,500万円) | 1/2以下 |
※1 ( )は賃上げ要件達成時
ロボットによる脱着装置や搬送台車、計測器など汎用性の高い設備であれば、カタログ注文型が有力な選択肢となります。
一方、人手がかかる一連の加工工程の自動化や既存設備のライン化、工場全体のレイアウト変更を伴うような、中~大規模な省力化に取り組む場合は、一般型を活用し、自社の工程に合わせた設備やシステムを導入する方法が適しています。
一般型の採択結果から見る製造業の活用状況
一般型はこれまで複数回にわたり公募が実施されており、累計採択数は6,500件を超えています。
第1回から第5回までの業種別採択件数を見ると、いずれの回でも製造業が最も高い割合を占めており、本補助金が製造業の設備投資を支える制度として広く活用されていることがわかります。
製造業による省力化補助金の活用状況については、以下コラムでも紹介しておりますので、ぜひあわせてご覧ください。
≪参考記事≫省力化投資補助金の製造業における活用状況とは?
一般型・カタログ注文型の採択結果から分析
採択事例にみる「省力化投資」のイメージ
ここでは、省力化投資補助金(一般型)の採択事例を紹介します。
現場の課題に対してどのような設備を導入し、省力化につなげたのかを見ていきましょう。

≪出典≫中小企業省力化投資補助金 一般型(第2回)採択結果について
本事例では、熟練作業者への依存という課題に対し、ワイヤ放電加工機とロータリーテーブルを組み合わせて導入することで、省力化と加工品質の向上を同時に実現する計画が評価されています。
ポイントは、単に設備を導入するのではなく、複数設備の組み合わせによって工程全体の改善を図っている点です。
ワイヤ放電加工機による高精度加工に加え、ロータリーテーブルの導入により、3次元加工にも対応し、作業効率と品質の向上を図っています。
また、事業計画では、作業時間の大幅な削減や製造数の増加といった定量的な効果に加え、創出した時間を新製品開発や顧客対応に充てることで、将来的な売上拡大につなげる計画まで示されています。
このように、人手不足や技能継承といった経営課題に対し、設備導入を単なる省力化にとどめず、付加価値の向上や事業成長まで見据えた計画となっている点が本事例の特徴といえるでしょう。
また、参考として、より一般的な設備構成による活用イメージも紹介します。
旋盤とマシニングセンタを別々の設備・工程で運用している製造業では、工程間のワーク搬送や再位置決め、段取り替えに多くの時間と手間がかかることがあります。
こうした課題には、旋削機能とマシニング機能を備えた「複合加工機」の導入が有効です。
1台で旋削加工からミーリング加工・穴あけ加工まで一貫して行えるため、工程集約による省力化が期待できます。
なお、複合加工機は省力化投資補助金(カタログ注文型)の製品カテゴリにも登録されており、カタログに登録された製品であれば、所定の要件を満たすことで補助対象となります。
自社の課題がカタログ登録製品で解決できる場合は、カタログ注文型の活用も選択肢の一つです。
申請を検討する際のポイントとは?
機械加工を行う製造業者が省力化投資補助金を活用する際は、次の点を意識すると計画が立てやすくなります。
・導入前の課題を定量的に整理
「段取り替えに1回あたり何分かかっているか」「検査工程に何人・何時間を要しているか」など、現状を数値で示すことで、削減効果の見込みを具体的に説明しやすくなります。
・汎用機器かオーダーメイドかの切り分け
ロボットハンドやコンペアなど既製品で対応できる範囲はカタログ注文型、既存設備のレイアウトに合わせたシステム連携が必要な場合は一般型、というように使い分けることで、補助金の申請可能性を最大化できます。
・省力化効果を計画に盛り込む
採択事例の多くは、単なる自動化にとどまらず、創出した人員を工程管理や技術承継、新規受注対応に振り向ける展望まで示しており、これが「付加価値額・生産性向上」という補助金の目的に合致する重要な要素となっています。
まとめ
旋盤・マシニングセンタ・放電加工・研削加工等の機械加工を担っている事業者は、いずれの工程においても、感覚値や経験に基づいた判断を必要とする熟練技能への依存度が高いことが多く、人手不足の影響を受けやすい業種です。
省力化投資補助金は、こうした課題に対して「一般型」と「カタログ注文型」という2つのアプローチを提供しています。
一般型の採択結果を見る限り、製造業は継続して採択件数の半数前後を占めており、金属製品加工や電気機械器具製造業など、機械加工業と工程の近い業種でも、ロボット化・自動搬送化による生産性向上の計画が数多く採択されています。
自社の課題を数値で可視化し、汎用設備とオーダーメイド設備を適切に組み合わせながら、削減した人員の再配置まで見据えた事業計画を描くことが、採択の可能性を高める第一歩になるといえるでしょう。
省力化投資補助金の活用を検討されている事業者の方は、ぜひ一度、認定支援機関にご相談ください。