この記事のポイント
22次公募は、20次以降続く申請者数の減少傾向がみられる一方、採択率は上昇
「製造・加工」「DX・IoT」「AI」「高付加価値化」を組み合わせたテーマが多数
採択のカギは「海外事業設計」の具体性とエビデンス
はじめに
中小企業庁および全国中小企業団体中央会より、2026年4月30日に「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」第22次公募における採択結果が公表されました。
中小企業庁の発表によると、現行の「ものづくり補助金」は「新事業進出補助金」と統合され、「新事業進出・ものづくりサービス補助金」として新たな制度として移行する予定です。
また、23次公募締切の申請受付も2026年5月8日をもって終了しており、新制度の公募開始を待たれている事業者の方も多いのではないのでしょうか。
こうした状況の中で公表された22次公募の採択結果は、現行制度の終盤における採択傾向を読み解くうえで、非常に参考となるデータといえます。
本コラムでは、公開された採択者リスト582件をもとに、都道府県別の傾向、事業テーマの方向性などを分析し、「採択された企業像」を多角的に読み解いていきます。
22次公募の全体像 ― 「狭き門」が続く中での採択率上昇
22次公募は、製品・サービス高付加価値化枠とグローバル枠の2枠体制で実施されました。枠別の内訳は次の通りです。
| 区分 | 総計 | 製品・サービス 高付加価値化枠 | グローバル枠 |
|---|---|---|---|
| 申請者数 | 1,552 | 1,451 | 101 |
| 採択者数 | 582 | 555 | 27 |
| 採択率 | 37.5% | 38.2% | 26.7% |
≪出典元≫
https://portal.monodukuri-hojo.jp/saitaku.html
注目すべきは、グローバル枠の採択率が26.7%と製品・サービス高付加価値化枠の38.2%を10ポイント以上下回ったことです。
グローバル枠は補助上限額が3,000万円と高額である一方、海外展開計画の実現可能性審査がより厳格に行われていることが伺えます。
グローバル枠への申請を検討されている事業者は、海外市場調査・販路の具体性・現地パートナーの実在性などをしっかりと示す事業計画書が不可欠です。

≪出典≫
https://portal.monodukuri-hojo.jp/saitaku.htmlより当社作成
15〜16次の頃は申請件数5,000件超・採択率も50%前後と高水準で推移していました。
一方、17次では申請者数・採択者数ともに大幅に減少しています。これは17次公募が現行の省力化投資補助金(一般型)の前身にあたる「オーダーメイド枠」のみを対象とした限定的な公募であったことが主な要因です。
その後、18次では申請件数が再び増加したものの、19時以降は減少傾向に転じ、22次では申請件数が1,552件と、15~16次と比較して約3分の1にまで縮小しました。
審査の難化に加え、賃上げ要件や事業計画書の質的ハードルが上がったことで、「準備不足での申請」を控える事業者が増えたためと考えられます。
その反面、しっかりと準備した申請者の比率が高まり、採択率は緩やかに回復しています。
「申請件数が減ったから狙い目」というよりは、「準備した者だけが残る競争」へシフトしたと理解した方がよいでしょう。
地域別分析 ― 関東一極集中と地方の存在感

≪出典≫
https://portal.monodukuri-hojo.jp/saitaku.htmlより当社作成
採択者582件をブロック別に集計したところ、関東ブロックが248件(42.6%)と圧倒的なシェアを占めました。次いで近畿112件(19.2%)、中部79件(13.6%)、九州44件(7.6%)、中国33件(5.7%)と続きます。東北15件・四国11件・沖縄11件と地方ブロックは少数派ですが、事業者数、人口比で見れば妥当な分布とも言えます。
| 都道府県 | 採択件数 |
|---|---|
| 東京都 | 115件 |
| 大阪府 | 50件 |
| 愛知県 | 39件 |
| 北海道 | 29件 |
| 埼玉 | 26件 |
≪出典元≫
https://portal.monodukuri-hojo.jp/saitaku.html
都道府県別のトップは東京都、次いで大阪府、愛知県と続きます。
三大都市圏に加えて、北海道が単独で29件と健闘している点は注目に値します。
地方の事業者でも、地域固有の課題解決・資源活用の視点を盛り込めば、十分に勝負できる制度設計となっています。
採択事業のテーマ傾向 ― キーワード分析から見える「採択されやすい計画」
採択された582件の事業計画書のタイトルから、頻出キーワードをカテゴリ別に集計しました。
| カテゴリ | 主なキーワード |
|---|---|
| 製造・加工関連 | 加工、金型、切削、製造、量産、マシニング、成形 |
| デジタル・IoT・DX | DX、IoT、システム、クラウド、オンライン、SaaS |
| AI・人工知能 | AI、生成AI、AI診断、AI搭載、解析 |
| 高付加価値・新商品開発 | 高付加価値、新商品、新製品、ブランド、差別化 |
| 自動化・省力化 | 自動化、ロボット、ドローン、省人化、省力化 |
| 生産性向上・内製化 | 生産性向上、内製化、一貫体制、工程集約 |
| 海外展開・グローバル | 海外展開、グローバル、輸出、北米、多言語 |
≪出典元≫
https://portal.monodukuri-hojo.jp/saitaku.html
ここから読み取れるのは、ものづくり補助金本来の主旨である「製造業の設備投資による生産性向上」を軸に、デジタル技術・AI・自動化といった先端技術と組み合わせた事業計画が高く評価される構造です。
一方で、「海外展開・グローバル」関連キーワードは30件程あり、グローバル枠採択数(27件)を上回ります。
これは高付加価値化枠での申請事業でも、輸出・海外販路開拓を視野に入れた計画が増えていることを示しています。
また、近年特徴的なのは、AI・DXキーワードの急増です。
AI関連事業計画も多く確認され、「製造業×AI」「サービス業×DX」は、審査における必須要素になりつつあると分析できます。
単なる設備購入計画ではなく、データ活用・自動制御・遠隔監視といった付加価値要素を組み込むことが採択への近道です。
制度が変わる今こそ知っておきたい、新制度「新事業進出・ものづくり補助金」
今回発表された22次の採択結果は、現行のものづくり補助金を振り返る上で、非常に重要な節目となるデータです。なお、現行制度としては23次公募(2026年5月8日締切)が最後の受付となっており、すでに申請受付は終了しています。
23次の採択発表は2026年8月上旬頃を予定しているため、22次採択結果は「制度終盤の傾向」を読み解くうえで注目される内容といえるでしょう。
そうした中、中小企業庁が2025年12月に公開した資料により、現行の「ものづくり補助金」と「新事業進出補助金」は統合される方向性が示されており、制度再編が進められています。
スケジュールの目安は以下のとおりです。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年5月8日 | ものづくり補助金23次 申請締切 |
| 2026年6月19日 | 新事業進出補助金 第4回公募 申請締切 |
| 2026年6月以降(想定) | 統合新制度の公募要領公開(予定) |
| 2026年夏頃(想定) | 新事業進出・ものづくり補助金」申請受付開始(予定) |
現行のものづくり補助金の第23次には間に合わなかったという方も、諦める必要はありません。
新制度でも中小企業の設備投資支援は継続されます。
〈新制度の3つの申請枠〉
新制度では、企業の取組内容に応じて、3つの申請枠が設けられる予定です。
①革新的新製品・サービス枠(上限:3,500万円)
既存事業の延長線上にある「深化」を支援する枠。新製品・サービスの開発や生産性向上のための設備投資が対象で、従来のものづくり補助金利用者には最も親しみやすい枠です。
②新事業進出枠(上限:9,000万円)
既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出という大胆なチャレンジを支援する枠です。
③グローバル枠(上限:9,000万円)
海外市場の開拓や輸出に向けた国内体制の強化を支援する枠です。
旧制度の最大3,000万円から最大7,000万円(特例時9,000万円)へ大幅引き上げとなり、海外展開への大規模投資が現実的になります。
新制度である「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」については以下コラムでも紹介しております。
ぜひ合わせてご覧ください。
≪参考記事≫
https://svltd.co.jp/shinjigyou-hojo-col/detail.html?id=2490#comp-17
新制度で「採択されやすい事業」の方向性
新制度においても、ものづくり補助金の設計思想を引き継ぐ形になります。
22次公募で採択された582件の事業計画名を読み解くと、いくつかの共通項が浮かび上がってきます。
① 「設備導入」だけで終わらせない
事業計画名の多くが「○○装置の導入による△△の高付加価値化」「□□技術を活用した新市場開拓」という構造を持っています。
機械装置の購入は手段に過ぎず、「導入後にどのような付加価値が生まれ、どのように生産性向上・賃上げにつながるか」のストーリー構築が必須です。
② デジタル・AI・自動化との組み合わせ
採択事業の約30%が何らかのデジタル要素を含んでいます。
IoTセンサー、AI画像認識、自動化ライン、データ連携プラットフォームなど、「設備×情報技術」のハイブリッド計画は高評価を得やすい傾向にあります。
③ 地域資源と海外市場の双方向視点
北海道の水産加工、新潟の伝統工芸、岐阜の建材など、地域固有の資源を活かした計画は採択されやすい傾向があります。
加えて、海外輸出や海外規格対応を組み込むと、グローバル枠でなくとも加点要素として作用します。
まとめ
22次公募の採択率37.5%という数値は、決して甘い門ではありません。
しかし、採択結果を分析することで見えてくるのは、「採択される事業計画には明確なパターンがある」という事実です。
そして、2026年夏頃にスタートする新制度「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」では、補助上限額の引き上げや申請枠の多様化により、これまで補助金を活用できなかった事業者にもチャンスが広がります。
新制度への対応も含め、補助金の活用について悩まれている事業者の方は、ぜひ制度に精通した認定支援機関へご相談ください。