この記事のポイント
製造業・建設業に次ぐ採択実績!卸売業・小売業の活用動向
どんな設備が採択されている?実際の事例を紹介
採択につながる事業計画のポイントとは?
はじめに
「人手不足が深刻なのに、なかなかデジタル化・自動化に踏み切れない」、こうした課題を抱える卸売業・小売業の中小企業は少なくありません。
受発注、在庫管理、ピッキング、出荷処理など、卸売業の現場では手作業に依存する業務が多く、人手不足への対応や業務効率化が大きな課題となっています。
このような状況から注目されているのが、「中小企業省力化投資補助金(一般型)」です。
IoTやロボット、デジタルツールなどを活用した省力化設備の導入を支援する補助金として、多くの業種で活用が進んでいます。
本コラムでは、公式の採択データをもとに、卸売業・小売業でどのような設備や取り組みが採択されているのかを紹介するとともに、事業計画を検討する際のポイントについて解説します。
卸売業・小売業の採択状況
中小機構が公表している採択結果概要によれば、第1回~第5回公募を通じて、卸売業は全採択件数の約4%~7%弱、小売業は約2%~4%弱を占めています。
公募回 | 第1回 | 第2回 | 第3回 | 第4回 | 第5回 |
|---|---|---|---|---|---|
採択件数(全体) | 1,240者 | 707者 | 1,854者 | 1,456者 | 1,251者 |
卸売業の割合 | 5.9% | 6.8% | 5.3% | 5.9% | 4.2% |
小売業の割合 | 2.3% | 2.7% | 3.9% | 2.2% | 2.7% |
≪出典≫中小企業省力化投資補助金 一般型 採択結果
https://shoryokuka.smrj.go.jp/ippan/grant_adoption/
第1回から第5回までの合計で、卸売業は350件以上、小売業は150件以上が採択されており、いずれも製造業・建設業に次ぐ採択実績を持つ業種の一つです。
採択割合は公募回によって多少の変動はあるものの、卸売業・小売業ともに各公募回で継続的に採択実績があることから、両業種にとって十分に活用を検討できる補助金といえるでしょう。
実際に採択された卸売業の事例
第4回公募では、食肉の加工・卸売業者が、基幹システムとハンディスキャナーを導入し、在庫管理や業務効率化を図る事業が採択されました。
この事業者は、商品情報をエクセルで管理していたため、部署間で十分な情報連携ができておらず、在庫の差異や棚卸作業の非効率化が課題となっていました。
また、営業・加工・受注部門で情報が分散しており、現場では手入力による転記作業も発生していました。
そこで、基幹システムとハンディスキャナーを導入し、商品情報や在庫情報を一元管理できる仕組みを構築しました。
さらに、バーコードを活用して入出庫や棚卸を行えるようにしたことで、入力・照合作業を自動化し、1日48.2時間の工数削減を見込んでいます。
在庫情報の精度向上やリアルタイムでの在庫把握が可能となったことで、営業・加工・在庫部門の連携強化によって、事業全体の競争力向上も期待されています。

≪出典≫中小企業省力化投資補助事業 一般型公募(第4回)採択結果について
https://shoryokuka.smrj.go.jp/assets/pdf/grant_adoption_summary_ippan_04.pdf
実際に採択された小売業の事例
第3回公募では、食肉・鮮魚を扱う小売業者が、自動計量包装値付機を導入し、加工・パッキング業務の省力化を図る事業が採択されました。
この事業者では、食肉・鮮魚の加工からパッキング、陳列までを全て人手で行っていたため、恒常的な人手不足に直面していました。
また、加工・パッキングに時間を要することで、適切なタイミングで商品を提供できないケースが発生し、販売機会の損失や生鮮品の廃棄・値引きロスにつながっていました。
そこで、ラップ巻き・計量、重量による値付け、ラベル印刷、ラベル貼りまでを一括で自動化できる自動計量包装値付機を導入しました。
その結果、1日あたり延べ70時間以上の作業時間削減が見込まれるほか、タイムリーな品出しによる販売機会の確保や、生鮮品の廃棄・値引きロスの削減も期待されています。
さらに、生鮮品の加工・パッキングを本店へ集約することで、他店舗への配送が可能となり、業務の効率化や規模のメリットも見込まれています。

≪出典≫中小企業省力化投資補助事業 一般型公募(第3回)採択結果について
https://shoryokuka.smrj.go.jp/assets/pdf/grant_adoption_summary_ippan_03.pdf
採択に向けた事業計画のポイント
本制度では、事業計画書に記載する省力化効果の具体性が重要な評価ポイントとなります。
公募要領では、「省力化指数=設備導入により削減される業務に要していた時間÷導入前の業務時間」で算出すると明示されており、削減時間を定量的に示すことが求められます。
採択事例でも、卸売業では「在庫検索に1日1,200分を要していた業務が、設備導入後には1日48.2時間削減できる」、小売業では「加工・パッキング業務が1日あたり延べ70時間以上削減できる」というように、導入前後の工数が具体的な数値で示されています。
申請にあたっては、まず自社の業務を棚卸しし、「どの作業にどれだけの時間を要しているか」を把握・整理することが重要です。
まとめ
卸売業・小売業は各公募回で安定して採択されており、全業種の中でも上位の採択実績があります。
人手不足や業務効率化に課題を抱える事業者にとって、有力な設備投資支援制度の一つといえるでしょう。
公式事例からも読み取れるように、重要なのは「何時間削減できるか」を根拠とともに示せる計画を作れるかどうかです。
「どんな設備が対象になるのか」「どう計画書を作ればいいのか」など申請にあたってお悩みの際は、ぜひ制度に精通した認定支援機関へご相談ください。