この記事のポイント
第5回の採択結果は「61.5%」と前回を下回るが、依然として魅力的な水準
製造業の比率が第1回から第5回まで一貫して低下、一方で建設業は右肩上がりに拡大している
採択者の都道府県は5回を通じて、大阪府・東京都・愛知県が上位を占める
申請者の事業規模の中心層は安定している一方、資本金面では小規模層の比率が緩やかに増加
はじめに
中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する「中小企業省力化投資補助事業(一般型)」は、人手不足に悩む中小企業等がオーダーメイド設備やIoT・AI・ロボットなどを導入し、省力化と生産性向上を図ることを支援する補助金です。
令和7年6月の第1回採択発表以降、約3か月~4か月のペースで公募・採択発表が繰り返されており、令和8年6月5日に第5回の採択結果が発表されました。
本コラムでは、第5回の採択結果の概要を確認するとともに、これまで公表されている第1回から第5回までの「採択結果概要」資料を比較し、申請・採択件数の推移、業種別・地域別の傾向、申請額や企業規模の分布がどのように変化してきたかを分析します。
申請・採択件数と採択率の推移
過去5回分の申請件数・採択件数・採択率は以下のとおりです。
公募回 | 申請数 | 採択数 | 採択率 |
|---|---|---|---|
第1回 | 1,809者 | 1,240者 | 68.5% |
第2回 | 1,160者 | 707者 | 60.9% |
第3回 | 2,775者 | 1,854者 | 66.8% |
第4回 | 2,100者 | 1,456者 | 69.3% |
第5回 | 2,035者 | 1,251者 | 61.5% |
≪参考≫中小企業省力化投資補助金 一般型 採択結果
https://shoryokuka.smrj.go.jp/ippan/grant_adoption/
申請件数は第2回で落ち込んだものの、第3回に2,775件と過去最多を記録し、その後は2,000件台で安定的に推移しています。
制度の認知が進み、応募者数自体は高い水準で定着してきたと見てよいでしょう。
採択率については60%前半~70%近くで推移しており、公募回によって5~8ポイント程度の差があります。
第5回は61.5%とやや低めですが、一般的な補助金制度(ものづくり補助金などは採択率30%台とされることが多い)と比べると、依然として採択されやすい制度であることに変わりはありません。
ただし、申請件数自体は高止まりしているため、今後も予算規模や審査の厳格化次第で採択率が変動する可能性はある点に留意が必要です。
業種別の採択傾向
主たる業種別の採択件数割合は、5回を通じて最も明確な変化が見られる項目です。
公募回 | 製造業 | 建設業 | 卸売業 | 小売業 |
|---|---|---|---|---|
第1回 | 61.7% | 11.3% | 5.9% | 2.3% |
第2回 | 58.4% | 12.4% | 6.8% | 2.7% |
第3回 | 51.3% | 15.5% | 5.3% | 3.9% |
第4回 | 50.1% | 15.9% | 5.9% | 2.2% |
第5回 | 49.7% | 17.7% | 4.2% | 2.7% |
≪参考≫中小企業省力化投資補助金 一般型 採択結果
https://shoryokuka.smrj.go.jp/ippan/grant_adoption/
製造業は依然として最大の採択業種ですが、その比率は回を追うごとに低下し、第5回では初めて5割を下回りました。一方、建設業は第1回の11.3%から第5回の17.7%まで着実に拡大しており、両者の差は縮小傾向にあります。建設業では、油圧ショベルへのICT機能付加や測量・施工管理システムなど、汎用設備を組み合わせた省力化投資が採択事例として多く紹介されており、現場の人手不足対策としての活用が広がっていることがうかがえます。
学術研究・専門技術サービス業も第1回2.7%→第5回6.1%と伸びており、製造・建設以外の業種にも採択の裾野が広がっている点は、これから申請を検討する非製造業の事業者にとって参考になる動きです。
地域別の傾向
都道府県別では、5回すべてで大阪府が採択件数トップを維持しています。
背景には、大阪府が国内有数の製造業集積地であることが挙げられるでしょう。
業種別の傾向でも、採択者の約半数を製造業が占めており、大阪府では製造業の採択者が特に多いことがうかがえます。
一方で東京都と愛知県の順位には変化が見られます。
公募回 | 1位 | 2位 | 3位 |
|---|---|---|---|
第1回 | 大阪府 124件(10.0%) | 愛知県 108件(8.7%) | 東京都 93件(7.5%) |
第2回 | 大阪府 67件(9.5%) | 愛知県 66件(9.3%) | 東京都 63件(8.9%) |
第3回 | 大阪府 182件(9.8%) | 東京都 167件(9.0%) | 愛知県 147件(7.9%) |
第4回 | 大阪府 177件(12.2%) | 東京都 145件(10.0%) | 愛知県 105件(7.2%) |
第5回 | 大阪府 140件(11.2%) | 東京都 135件(10.8%) | 愛知県 110件(8.8%) |
()内全体の割合
≪参考≫中小企業省力化投資補助金 一般型 採択結果
https://shoryokuka.smrj.go.jp/ippan/grant_adoption/
第1回と第2回は愛知県が東京都を上回っていましたが、第3回以降は東京都が愛知県を逆転し、その傾向が第5回まで続いています。47都道府県すべてで採択事業者が存在する点は変わらず、特定地域に偏らず全国的に活用が進んでいる制度であることがうかがえます。
申請額・従業員数・資本金別の傾向
(1) 補助金申請額の分布
申請額の分布は5回とも「1,500万円~1,750万円未満」が最多で、概ね18~21%の事業者がこの帯に集中しています。
補助上限額が大きい制度ではありますが、実際の活用イメージとしてはこの価格帯が中心的な投資規模であることが安定して示されています。

≪出典≫中小企業省力化投資補助金 一般型 採択結果
https://shoryokuka.smrj.go.jp/ippan/grant_adoption/より弊社作成
「1,500~1,750万円未満」は常に上位ですが、第3回の20.7%をピークに第4回・第5回はやや落ち着き、代わって「750~1,000万円未満」(第4回16.8%)など、より小規模な投資額帯の比率が公募回によって高まる場面も見られます。
(2) 従業員数別の採択件数割合
従業員数別では、第1回~第3回は「6~10人」または「21~30人」が最多でしたが、第4回では「5人以下」が19.1%で最多となり、第5回も「6~10人」が18.8%と、回を追うごとに小規模事業者の比率が高まる傾向が見られます。

≪出典≫中小企業省力化投資補助金 一般型 採択結果
https://shoryokuka.smrj.go.jp/ippan/grant_adoption/より弊社作成
「5人以下」「6~10人」を合計した小規模層の比率は、第1回25.6%→第5回32.9%へと拡大しており、採択者の中心が中堅規模からより小規模な事業者へシフトしている様子がうかがえます。
(3) 資本金別の採択件数割合
資本金別では「1,000万円~2,000万円未満」が5回連続で最多ですが、その比率自体は第1回34.0%→第5回28.2%へと緩やかに低下しており、資本金規模の小さい層(個人事業主・100万円未満・100~500万円未満など)の合計比率が相対的に増加しています。

≪出典≫中小企業省力化投資補助金 一般型 採択結果
https://shoryokuka.smrj.go.jp/ippan/grant_adoption/より弊社作成
「1,000~2,000万円未満」の比率が緩やかに低下する一方、「100~500万円未満」「500~1,000万円未満」といったより小さい資本金帯の比率が上昇しています。
これらの数字からも、当初は中堅規模の製造業が中心だった採択者層が、回を経るごとに小規模・個人事業主層にも広がってきていることが読み取れます。
第5回の採択事例の特徴
各回の「採択結果概要」資料には、業種ごとに1~2件、実際に採択された事業計画を要約した「実際に採択された案件の概要紹介」というページが掲載されています。

≪出典≫中小企業省力化投資補助金 一般型 採択結果概要
https://shoryokuka.smrj.go.jp/assets/pdf/grant_adoption_summary_ippan_05.pdf
第5回の事例紹介では、自動車部品工場における洗浄・乾燥工程の自動化、土木工事における測量からコンクリート加工までの工程統合、宿泊業における受付・精算・館内利用の一元的なセルフ化・自動化など、単一工程の自動化に留まらず、複数工程・複数部門をまとめてシステム化する事例が目立ちます。
給食業におけるAIによる異物検知と衛生行動監視を組み合わせた事例のように、AIを活用した品質管理・安全管理への投資も紹介されており、省力化の対象が「作業の自動化」から「管理・判断の自動化」へ広がりつつある様子がうかがえます。
おわりに
第1回から第5回までの採択結果を比較すると、申請件数は高水準で定着し、採択率も60%台を維持する高採択率の制度であることが改めて確認できます。
一方で、製造業中心だった採択者層は建設業をはじめとする非製造業へと裾野を広げ、企業規模も中堅から小規模へと広がりを見せています。
今後申請を検討する事業者にとっては、自社の業種や規模が「典型的な採択者像」から外れていても、必ずしも不利になるわけではないことが、これまでの5回分のデータから読み取れます。
一方で申請件数自体は高止まりしており、審査の競争はなくなりません。
事業計画における省力化効果や付加価値向上の見込みを具体的な数値で示すことが、これまで以上に重要になってくるでしょう。
次回以降の公募スケジュールや変更点についても、最新の公募要領を確認しながら準備を進めることをおすすめします。
補助金の活用を検討されている方は、ぜひ認定支援機関へご相談ください。