この記事の注目ポイント
「ものづくり補助金」は、生産性革命推進事業の枠組みから外れて継続
今後は、ものづくり補助金と新事業進出補助金が統合(2026年4月以降)
グローバル枠は、従業員数によっては補助上限額が大幅引き上げ
はじめに
ものづくり補助金に関心があり、活用を検討されている事業者の方は、「生産性革命推進事業」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。ものづくり補助金は平成24年度補正予算から始まり、ここ十数年続いている中小企業支援策で、令和元年度補正予算から中小企業庁が行う生産性革命推進事業の一つとして実施されてきました。
令和7年度補正予算では、ものづくり補助金はこの事業の枠組みからは外れ、別の既存基金の活用により支援されることが発表されています。
このコラムでは、生産性革命推進事業が果たしてきた役割とものづくり補助金の今後について、解説します。
「生産性革命推進事業」が生まれた背景と狙い
中小企業生産性革命推進事業とは、中小企業・小規模事業者の生産性向上の取組状況に応じて、主に設備投資への補助等を通じて事業者の生産性向上を支援する取り組みです。
日本では少子高齢化や人口減少、さらには国際競争の激化、働き方改革や賃金引き上げ・インボイス制度など、多くの制度変更や社会経済の構造変化が相次いでいます。こうした中、中小企業・小規模事業者にとっては、人手不足や業務効率化、設備・システム更新、販路開拓などが大きな課題となっています。
これらの変化に対し、設備投資、IT導入、販路開拓、事業承継支援などを、複数年にわたって継続的に、かつ一体的に支援するため、中小企業基盤整備機構が令和元年度補正予算にて「生産性革命推進事業」を創設しました。
当初は以下の補助金制度を「3大補助金」として、事業を行っていました。
ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)
小規模事業者持続化補助金(持続化補助金)
IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)
国の予算は、その1年にどれだけの収入を得て、どの事業にいくら支出するかを示した年次の計画です。法律に基づき毎年度編成され、国会の議決を経て初めて実行されます。年度内に使い切ることが前提で、未使用分は原則として翌年度に自由に繰り越せません。
一方、基金は特定の目的のために積み立てられたもので、複数年にわたって継続的に活用することが想定されています。基金は年度を超えて保有できるため、景気変動や予算状況に左右されず、長期的・戦略的に資金を運用できる仕組みとなっています。
「生産性革命推進事業」の中心となる補助金については基金で運用されており、通年で公募が実施され、3~4か月おきに複数の締め切りを設け、事業者が都合の良いタイミングで申請できるような制度となっています。
例外的に、2024年に実施されたものづくり補助金の17次・18次公募については、5月・6月に公募が締め切られ、その年度内に補助事業を終わらせる必要がありました。しかし、19次公募以降は再び、約3か月おきに公募締切りが設定され、連続して公募/採択発表が行われています。
「ものづくり補助金」の始まりと目的
「ものづくり補助金」は、もともと平成24年度(2012年度)補正予算にて、「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」という名称でスタートしました。その後、毎年の補正予算にて中小企業支援の一つとして計上され、運用されています。
当初の主な目的は、製造業における「試作品開発」「新製品の研究・開発」「生産プロセス改善」などを支援することで、産業の国際競争力を高めることでした。
後に対象が拡大され、製造業に限らず、商業・サービス業、情報通信、建設、小売、宿泊など幅広い業種が申請対象となりました。これにより、いわゆる「ものづくり」にとどまらない、広義の「事業革新」「業務効率化」「サービス品質向上」まで、その支援範囲が広がりました。また、公募回によっては、DX(デジタル化)、GX、海外展開など、多様な「生産性向上」の取り組みに対応する枠が整備されました。
生産性革命推進事業にてものづくり補助金が実施されるようになってからは、複数の「締切(回)」による公募が定期的に実施されるようになり、申請機会が増え、より柔軟に企業がタイミングを選べるようになりました。
令和7年度補正予算における「ものづくり補助金」
生産性革命推進事業の中心的な役割を担っていた「ものづくり補助金」ですが、令和7年度補正予算では、この枠組みから外れ、「ものづくり商業サービス省力化・革新的開発・新事業・海外展開促進事業」という枠組みのなかで、「新事業進出・ものづくり補助金」として、支援が実施されることになりました。
令和7年に再編された中小企業等事業再構築促進基金の活用により、2,960億円が予算計上されています。
≪参考≫
中小企業庁『ものづくり商業サービス省力化・革新的開発・新事業・海外展開促進事業』
補助金は、政策推進のために行われているため、これまでも、その時々の必要性に応じて、申請枠が追加されたり、変更されたりしてきました。ものづくり補助金についても、コロナ禍において影響を受けた企業を支援するための特別枠が設定されたこともありましたし、最近では、給与支給総額や最低賃金水準の向上を推進するため、基本要件が見直されています。最近の公募では、一定規模以上の企業については、従業員の働き方・子育て支援制度の整備などが求められるようになってきています。
また、長い間「生産プロセスの改善」は、ものづくり補助金で支援されていましたが、現在は、省力化投資補助金での支援目的となっており、ものづくり補助金は、新製品、新サービスの支援という色合いが強くなっています。そのため、目的の近しい新事業進出補助金と統合される流れになったようです。
令和7年度補正予算では、生産性革命推進事業には、昨年度補正予算に続き3,400億円が計上されており、以下の補助金が事業の中心となって、継続して実施されます。
中小企業成長加速化補助金
デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)
持続化補助金
事業承継・M&A補助金
「新事業進出・ものづくり補助金」の概要
新事業進出補助金とものづくり補助金の統合後は、以下のような3つの申請枠で、支援されます。
※()は大幅賃上げ特例適用後の上限額
<革新的新製品・サービス枠>
革新的な製品・サービスの開発のための設備投資等を支援する補助金で、従来の「ものづくり補助金」製品・サービス高付加価値化枠です。補助上限額や補助率などの変更は見られません
| 従業員数 | 補助上限額 | 補助率 |
| 5人以下 | 750万円(850万円) | 1/2、小規模・再生2/3 ※最低賃金引上げ特例は2/3 |
| 6~20人 | 1,000万円(1,250万円) | |
| 21~50人 | 1,500万円(2,500万円) | |
| 51人以上 | 2,500万円(3,500万円) |
<新事業進出枠>
新市場や高付加価値事業への進出にかかる設備投資等を支援する補助金で、事業再構築補助金の後継と呼ばれ、現在、第3回公募が実施されている新事業進出補助金のスライドとなる枠です。こちらも、現時点では補助上限額や補助率などの変更はないようです。
| 従業員数 | 補助上限額 | 補助率 |
| 20人以下 | 2,500万円(3,000万円) | 1/2 ※最低賃金引上げ特例は2/3 |
| 21~50人 | 4,000万円(5,000万円) | |
| 51~100人 | 5,500万円(7,000万円) | |
| 101人以上 | 7,000万円(9,000万円) |
<グローバル枠>
ものづくり補助金22次公募で実施されているグローバル枠は、従業員数に関わらず、補助上限額は3,000万円、補助率は中小企業が1/2、小規模事業者は2/3となっていました(※大幅賃上げ特例による引上げ額は従業員数によって異なる)。統合後のグローバル枠では、従業員数によっては大幅に補助上限額が引き上げられます。
| 従業員数 | 補助上限額 | 補助率 |
| 20人以下 | 2,500万円(3,000万円) | 2/3 |
| 21~50人 | 4,000万円(5,000万円) | |
| 51~100人 | 5,500万円(7,000万円) | |
| 101人以上 | 7,000万円(9,000万円) |
おわりに
昨年末には令和7年度補正予算が成立し、今年実施される中小企業支援策もあきらかになってきています。
申請の枠組みは変わるものの、ものづくり補助金をはじめとして、新事業進出補助金、省力化投資補助金など、中小企業向けの主要な支援策は、今年も継続して実施されます。ものづくり補助金、新事業進出補助金の統合について、具体的なスケジュールは発表されていませんが、ものづくり補助金23次公募、新事業進出補助金第4回公募以降になると見込まれています。
「ものづくり補助金」をはじめとする補助金制度は、中小企業や小規模事業者にとって、新しい時代に対応する挑戦と転換を後押しする力となります。設備導入や、新サービス、DX、海外展開といった投資を考えていらっしゃいましたら、ぜひこの制度の活用をご検討ください。
とはいえ、ものづくり補助金の直近発表公募回である21次公募の採択率は、34.1%と厳しいものになっています。補助金の活用について悩まれている事業者の方は、ぜひ制度に精通した認定支援機関へご相談ください。